台湾籍の方の相続の準拠法
台湾籍の方が日本国内に財産を遺して亡くなったとき、その相続にどの国の法律が適用になるでしょうか。
日本で生まれ育った台湾籍の方も多く、普段から日本の法律に従って生活しているので、相続も当然に日本の法律によると思っている方もいらっしゃいますが、そうではありません。日本の法律(法の適用に関する通則法)によれば「相続は、被相続人の本国法による。」と規定されています。つまり、台湾籍の方の相続は、台湾の法律によるということです。
ただし、台湾の法律が、日本にいる人または日本の財産の相続は日本の法律で処理しますと書いてあるときは、相続は日本の法律によることになります(これを「反致」といいます。)。そこで台湾の法律がどうなっているのかを調べる必要があります。
台湾の渉外民事法律適用法58条に「繼承,依被繼承人死亡時之本國法。(相続は、被相続人の死亡時の本国法による。)」と規定されています。台湾の法律でも、相続は被相続人の本国法によことになります。
したがって、結論として、台湾籍の方の相続には台湾の法律が適用されます。
法定相続人(1138条)
配偶者は常に相続人になり、その他の相続人は次の順序によります。
配偶者は常に相続人になり、その他の相続人は次の順序によります。
- 第一順位 直系血族卑属
- 第二順位 父母
- 第三順位 兄弟姉妹
- 第四順位 祖父母
第一順位の相続人は親等が近い者を先とし、被相続人より先に死亡しているときは、その直系血族卑属がその相続分を代襲相続します。
法定相続分(1144条)
配偶者の相続分は、
配偶者の相続分は、
- 第一順位の相続人と同じく相続するときは、他の相続人と平均する。
- 第二順位第三順位の相続人と相続するときは、その相続分は2分の1。
- 第四順位の相続人と相続するときは、その相続分は3分の2。
- 第一順位から第四順位までの相続人がいないときは、全て。
相続人順序 | 配偶者 | 直系血族卑属 | 父母 | 兄弟姉妹 | 祖父母 |
---|---|---|---|---|---|
相 続 分 |
平均 | 平均 | ✖ | ✖ | ✖ |
1/2 | ✖ | 1/2 | ✖ | ✖ | |
1/2 | ✖ | ✖ | 1/2 | ✖ | |
2/3 | ✖ | ✖ | ✖ | 1/3 | |
遺留分 | 相続分 1/2 |
相続分 1/2 |
相続分 1/2 |
相続分 1/3 |
相続分 1/3 |
と規定されています。
相続権を失う
遺留分(1223条)
台湾でも遺留分があり、次のように定められています。
台湾でも遺留分があり、次のように定められています。
- 配偶者、直剣血族卑属、父母 2分の1
- 兄弟姉妹 3分の1
- 祖父母 3分の1
相続権を失う
- 第1145条 左記各号の一の事由により、相続権を失う。
- 故意に被相続人又は相続すべきものを死亡させ、又は未遂によるも死に至らせ有罪判決を受けたこと
- 詐欺又は脅迫により被相続人に相続についての遺言をさせ、又はその撤回若しくは変更をさせたこと
- 詐欺又は脅迫により被相続人が相続について遺言をするのを妨害し、又はその撤回若しくは変更を妨害したこと
- 被相続人の相続についての遺言を偽造、変造、隠匿又は隠滅したこと
- 被相続人による重大な虐待又は侮辱により、被相続人が相続させない意思表示をしたこと
- 前項第2号ないし第4号の規定は、被相続人が宥恕したときは、相続権を失わない。
遺產分割(1164条)
相続人はいつでも遺産分割を請求できるとされています。このあたりは日本と同じです。
相続放棄(1174条)
相続放棄は、相続できることを知ったときから【3か月以内】に裁判所に対してこれを行う。
相続放棄は、相続開始時に遡って効力を生じる。と日本と同じような規定になっています。
しかし、日本の相続放棄とは異なることもあります。
第一順位の相続人について、その親等が近い者が等しく相続権を放棄したときは、次の親等の直系血族卑属が相続する(1176条5項)とされています。これは、例えば、第一順位の相続人の子が全員相続放棄をしたら、次は孫が相続人になるということです。日本では子が放棄しても孫が相続人になることはありませんから、ここは大きな違いです。
また、相続の放棄をしたら、相続の放棄後、書面をもって、その放棄によって相続しなければならない者に通知しなければならないとされているので、相続放棄をしたら次順位の相続人に通知しないといけません。
借金があるのに期限内に相続放棄をしなかったらどうなるでしょうか?相続人は被相続人の債務につき、相続によって取得した遺産を限度として弁済の責任を負う(1148条2項)とされています。つまり、相続で取得した財産の範囲でしか借金を払う義務を追わないということのようです。日本では、相続放棄しなかったら、その借金全額の義務を負うことになるので、日本と比べると台湾の方が借金がある場合は相続人にやさしいですね。
相続人はいつでも遺産分割を請求できるとされています。このあたりは日本と同じです。
相続放棄(1174条)
相続放棄は、相続できることを知ったときから【3か月以内】に裁判所に対してこれを行う。
相続放棄は、相続開始時に遡って効力を生じる。と日本と同じような規定になっています。
しかし、日本の相続放棄とは異なることもあります。
第一順位の相続人について、その親等が近い者が等しく相続権を放棄したときは、次の親等の直系血族卑属が相続する(1176条5項)とされています。これは、例えば、第一順位の相続人の子が全員相続放棄をしたら、次は孫が相続人になるということです。日本では子が放棄しても孫が相続人になることはありませんから、ここは大きな違いです。
また、相続の放棄をしたら、相続の放棄後、書面をもって、その放棄によって相続しなければならない者に通知しなければならないとされているので、相続放棄をしたら次順位の相続人に通知しないといけません。
借金があるのに期限内に相続放棄をしなかったらどうなるでしょうか?相続人は被相続人の債務につき、相続によって取得した遺産を限度として弁済の責任を負う(1148条2項)とされています。つまり、相続で取得した財産の範囲でしか借金を払う義務を追わないということのようです。日本では、相続放棄しなかったら、その借金全額の義務を負うことになるので、日本と比べると台湾の方が借金がある場合は相続人にやさしいですね。
台湾籍の方の相続手続きの必要書類
台湾籍の方が亡くなって日本の不動産や銀行口座の相続手続きをするときに必要になる書類は、日本人の相続のときと変わりません。
日本人と変わらないことで、一番問題になるのは戸籍です。台湾にも日本と同じように戸籍制度があり、台湾籍の方が亡くなったときは、出生から死亡までの戸籍謄本を取得する必要があります。
台湾の戸籍を取得するには、台湾にいる人に依頼して取ってもらう方法と日本から台湾の役所(戸政事務所)に郵送で請求する方法があります。どちらの方法を取るにしても、日本国内で必要書類の認証を受ける必要があり、手続きはとても煩雑です。
台湾内の銀行預金相続手続き、不動産の相続手続きについて
日本人や台湾人が台湾に財産を残して亡くなってしまった場合は、どのようになるのでしょうか?
このような台湾の銀行口座の相続手続きや不動産の相続手続きについては、台湾で手続きをとる必要があります。
そして、台湾内での銀行預金相続手続き、不動産の相続手続きについては、日本国内で手続きするより、はるかに時間、費用がかかります。
これは、通常の手続き自体が日本よりも台湾のほうが複雑な上、日本側では翻訳、認証、調査等に費用がかかり、台湾側でも弁護士、税理士、地政士(日本でいう司法書士に相当)に依頼が必要となることもあるからです。
この場合に、コストを抑えようとして、知り合いの台湾人に翻訳通訳者に協力してもらい、相続手続きをすすめようとする方がいますが、これは絶対にやめたほうがいいです。
実際、多くのケースで途中で手続きがストップしてしまい、どうしようもなくなって専門家に泣きつく、というケースがあとをたちません。
なぜこのようになるかというと、このような手続きについては、日本と台湾では大きく手続きが違い、素人がやろうとしても混乱してしまう上、台湾の法律、税務の他、日本の法律、税務についても考慮して手続きをすすめる必要があるからです。
この場合、きちんと手続きを踏むためには、日本と台湾の双方の専門家が協力しつつすすめる必要があります。
台湾人の在日不動産の相続登記手続き
不動産が日本国内にあるので、日本の法律(不動産登記法)に従って、日本国内の法務局に相続登記の申請をします。この点は通常通りです。
ただし、注意が必要なのは相続登記に必要な書類についてです。
台湾は日本と同じように、戸籍制度がありますので、亡くなられた方(被相続人)の出生から死亡までの記載のある台湾の戸籍を請求し、取得する必要があります。
ここで大変なのは、近くの台湾文化経済代表処に行くだけでは台湾戸籍が取得できない、ということです。
ここで、台湾戸籍請求の方法ですが、いくつか方法があります。
例えば、一つの方法として、在日台湾人の方は、台北駐日経済文化代表処に出頭して、戸籍請求の委任状を作成し、その委任状を台湾の友人に郵送すれば、台湾に行かずに戸籍を取得することができます。
但し、台湾にお住まいの方でなければ受任者になれませんので、台湾在住の知人の方がいなければ、この方法は使えません。また、何箇所もの認証が必要となりますので、手間が膨大となります。
そして、取得した台湾戸籍は翻訳する必要があります。この翻訳がまたやっかいです。台湾戸籍の古いものは縦書き手書きでしかも達筆です。
そのため、一般の方には台湾戸籍は解読不能ですし、一般の中国語翻訳業者では対応できないことも多いです。
こうなると、もはやどうしたらよいのかわからなくなってしまうことが多いのではないでしょうか。
台湾籍の方が亡くなって日本の不動産や銀行口座の相続手続きをするときに必要になる書類は、日本人の相続のときと変わりません。
日本人と変わらないことで、一番問題になるのは戸籍です。台湾にも日本と同じように戸籍制度があり、台湾籍の方が亡くなったときは、出生から死亡までの戸籍謄本を取得する必要があります。
台湾の戸籍を取得するには、台湾にいる人に依頼して取ってもらう方法と日本から台湾の役所(戸政事務所)に郵送で請求する方法があります。どちらの方法を取るにしても、日本国内で必要書類の認証を受ける必要があり、手続きはとても煩雑です。
台湾内の銀行預金相続手続き、不動産の相続手続きについて
日本人や台湾人が台湾に財産を残して亡くなってしまった場合は、どのようになるのでしょうか?
このような台湾の銀行口座の相続手続きや不動産の相続手続きについては、台湾で手続きをとる必要があります。
そして、台湾内での銀行預金相続手続き、不動産の相続手続きについては、日本国内で手続きするより、はるかに時間、費用がかかります。
これは、通常の手続き自体が日本よりも台湾のほうが複雑な上、日本側では翻訳、認証、調査等に費用がかかり、台湾側でも弁護士、税理士、地政士(日本でいう司法書士に相当)に依頼が必要となることもあるからです。
この場合に、コストを抑えようとして、知り合いの台湾人に翻訳通訳者に協力してもらい、相続手続きをすすめようとする方がいますが、これは絶対にやめたほうがいいです。
実際、多くのケースで途中で手続きがストップしてしまい、どうしようもなくなって専門家に泣きつく、というケースがあとをたちません。
なぜこのようになるかというと、このような手続きについては、日本と台湾では大きく手続きが違い、素人がやろうとしても混乱してしまう上、台湾の法律、税務の他、日本の法律、税務についても考慮して手続きをすすめる必要があるからです。
この場合、きちんと手続きを踏むためには、日本と台湾の双方の専門家が協力しつつすすめる必要があります。
台湾人の在日不動産の相続登記手続き
不動産が日本国内にあるので、日本の法律(不動産登記法)に従って、日本国内の法務局に相続登記の申請をします。この点は通常通りです。
ただし、注意が必要なのは相続登記に必要な書類についてです。
台湾は日本と同じように、戸籍制度がありますので、亡くなられた方(被相続人)の出生から死亡までの記載のある台湾の戸籍を請求し、取得する必要があります。
ここで大変なのは、近くの台湾文化経済代表処に行くだけでは台湾戸籍が取得できない、ということです。
ここで、台湾戸籍請求の方法ですが、いくつか方法があります。
例えば、一つの方法として、在日台湾人の方は、台北駐日経済文化代表処に出頭して、戸籍請求の委任状を作成し、その委任状を台湾の友人に郵送すれば、台湾に行かずに戸籍を取得することができます。
但し、台湾にお住まいの方でなければ受任者になれませんので、台湾在住の知人の方がいなければ、この方法は使えません。また、何箇所もの認証が必要となりますので、手間が膨大となります。
そして、取得した台湾戸籍は翻訳する必要があります。この翻訳がまたやっかいです。台湾戸籍の古いものは縦書き手書きでしかも達筆です。
そのため、一般の方には台湾戸籍は解読不能ですし、一般の中国語翻訳業者では対応できないことも多いです。
こうなると、もはやどうしたらよいのかわからなくなってしまうことが多いのではないでしょうか。